自己破産で受任通知が送付されても債権者は訴訟を提起できる!?
「自己破産」は、多額の借金を、裁判所を通した手続きによりほとんど全額免除してもらえる債務整理の一種です。
自己破産手続を受任した弁護士は、債権者に対して受任通知を送付します。
受任通知を受け取った貸金業者や債権回収会社等の債権者は、債務者に対して直接取り立てをすることができなくなります。
これにより、債務者は自己破産の依頼直後から平穏な日常を取り戻すことができるのです。
しかし、実は、受任通知を受け取った後でも、債権者は裁判で勝訴判決を得て、給料などを差し押さえることができるのです。
ここでは、受任通知の効力や、債権者が受任通知を送付されても訴訟を提起してきた場合の対処方法について説明します。
このコラムの目次
1.受任通知の役割
(1) 自己破産の受任通知とは?
受任通知とは、自己破産手続について債務者の代理人となった弁護士が、自分が債務者の代理人となったことや、債務者がこれから自己破産することなどを、債権者に通知する書面のことです(自己破産以外の債務整理手続きでも同様に送付されます)。
弁護士から受任通知を受け取った貸金業者や債権回収会社等の債権者は、債務者から取り立てできなくなります。
受任通知を受け取った貸金業者などが電話・訪問など直接の取立てをすることは、法律で禁止されているからです(なお、貸金業者や債権回収会社等以外の債権者については、直接の取り立ては法的に禁止されていません)。
受任通知を受け取ったにもかかわらず取立をした貸金業者などは、刑罰を受ける、または、業者登録を取消されてしまいます。
弁護士は、ほとんどの場合、債務者との契約後すぐに受任通知を債権者に送付して取立を止めさせます。
そうすることで、債務者がこれまで債権者に返済していたお金を手続費用に回せるよう、また、申立ての必要書類を集められるよう、手続の準備のための環境を整えるのです。
ただし、受任通知の送付により取り立てが止まればすべてが安心というわけではありません。
当然ですが、自己破産を裁判所に認めてもらわなければ借金は無くなりません。
さらに、自己破産を裁判所に申し立てる前にも、大きな問題が生じるおそれがあります。
それが、債権者による訴訟の提起です。
(2) 受任通知後でも訴訟の提起は可能
受任通知は、債権者の動きを完全に止めることはできません。
債権者は、受任通知を受け取った後でも、訴訟の提起、つまり、裁判に訴えることができます。
受任通知を受け取った債権者が借金を取り立てできなくなる理由は、自己破産手続をすることになった債務者の生活の平穏を取り戻すことにあります。
一方、訴訟は、公的機関である裁判所で、法律の専門家である裁判官の判断を求めるものです。
少なくとも、取り立てのように債務者の生活そのものを壊すものではないと判断されます。
ですから、受任通知後でも債権者が訴訟を起こすことが許されているのです。
2.受任通知後の訴訟によるリスク
借金をしていること自体は間違いありませんから、訴えられてしまえば、最終的には裁判所は債権者の訴えを認めてしまうでしょう。
一般的には、判決が確定してしまえば、給料や預貯金などが債権者に差し押さえられ、借金の返済に強制的に充てられてしまいます。
差し押さえを止めるには、裁判所に自己破産を申し立て、破産手続開始決定を出してもらわなければなりません。
また、裁判を起こされると、このような金銭的な問題だけでなく、人間関係に関して大きな問題になることがあります。
多くの人が自己破産をためらってしまう理由の一つが、家族や勤務先に借金や自己破産を知られてしまわないかという不安です。
家族については、家計簿や家族の収入に関する資料などの問題をクリアできれば、知られずに自己破産できる可能性もあります。
また勤務先に知られるとしたら、自己破産で制限されてしまう職業で働いている場合や、勤務先から借金をしている場合など、特別な事情があるときだけでしょう。
しかし、債権者に訴訟を起こされてしまうと、家族や勤務先に借金や自己破産をしようとしていることが知られてしまうリスクが生じます。
訴状は自宅に送付されますから、家族に見つかってしまうおそれがあります。
また、もし給料を差し押さえられてしまえば、勤務先に裁判所から給料差し押さえについて連絡がいってしまいます。
自己破産は、法律上、解雇の原因にはなりません。しかし、借金をしている・自己破産をするという事実により、職場に居づらくなってしまうことはあるでしょう。
では、どうすれば、債権者からの訴訟提起により家族や勤務先に借金を知られてしまうリスクを下げられるのでしょうか。
3.訴訟のリスクの回避方法
債権者からの訴訟提起を防ぐために、少しでも早く自己破産手続きを申し立てましょう。
ほとんどの債権者は、自己破産手続が始まれば差し押さえが無意味になることもあって、受任通知を受け取っても、すぐには訴訟を提起しません。
しかし、受任通知を受け取ったのに、一向に裁判所から自己破産手続が始まりましたよという連絡が来ないと「債務者は実は自己破産して借金をなくす気がないのではないか」「今から訴訟をしても、自己破産手続きが始まる前に差し押さえが間に合うのではないか」と考え、訴訟を提起する可能性があります。
(※ごく一部の強硬な業者は、手続開始前に差し押さえができるよう、受任通知を受け取ってすぐに訴訟提起をしてくることもあります。)
いずれにせよ、債権者による訴訟提起や差し押さえより前に、手続を始められるようにしましょう。
申立てが遅れないように、手続のための必要書類の準備を迅速に行い、手続費用も着実に積み立てることが大切です。
4.受任通知後の訴訟を避けるためにも弁護士へご依頼を
自己破産を依頼した弁護士が債権者に受任通知を送付すれば、取り立ては止まりますが、訴訟提起のリスクは残ります。
給与などを差し押さえられるところまでいかずとも、家族や勤務先に借金の事実を知られ、日常生活のストレスにつながるおそれがあります。
自己破産をお考えの方は、迅速に手続きを開始するためにも、弁護士にお早めにご相談ください。
弁護士であれば、債権者の対応を見極め、迅速な行動、丁寧な説明、そしてそれらを裏付ける的確な見通しをもって、手続の準備段階からあなたをサポートできます。
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