交通事故で使える便利な弁護士費用特約の具体的メリット
「交通事故被害に遭った。弁護士に相談したいけれど、費用面が心配…」このように考える人は少なくありません。
弁護士に依頼することは、どうしても敷居が高く感じてしまうというのもありますが、やはり費用面で負担が大きいと考える方が多いのでしょう。
しかし、このような金銭的な不安は簡単に解決できるケースも多いです。
ドライバーの方なら、ほとんどの方が任意保険会社の保険に加入していることでしょう。これには特約が付帯しているケースが多く、その1つに弁護士費用特約があります。
弁護士費用特約を使えば、費用面の負担なく弁護士に依頼できるため安心です。
もっとも、どんなときでも使える保険というわけではありません。
そこで今回は、弁護士特約の概要から補償範囲、メリット・デメリットまで解説します。
このコラムの目次
1.弁護士費用特約とは
まずは、皆さんの自動車保険にも付帯している可能性がある、弁護士費用特約の基本について解説します。
(1) 事故の際の弁護士費用負担ゼロ
では、弁護士費用特約とはどのようなものなのでしょうか。
弁護士費用特約とは、自動車保険に付帯している特約の1つのことで、交通事故被害など万が一のアクシデントが起きた場合に、弁護士への相談料や報酬などの弁護士費用を負担してくれるものです。
弁護士費用の負担を考え、弁護士への依頼を控えてしまう方が多いことから、このような便利な保険ができたようです。
この特約は、オプションとしてつけることができますが、最初からプランで付帯しているものも増えています。プランで付帯している場合には、気づかず加入しているケースもあるのが実情です。
あるいは、加入時に「付けておいたほうがよさそう!」と思い付帯させたのに、いざ事故に遭った際は忘れてしまっていることもあるかもしれません。
そのためか、弁護士費用特約の利用率は1%以下という統計も出ているようです。実際の特約加入率が50%を超える数字が出ているのにも関わらず、ほとんどの方は利用されていないということになります。
このように、弁護士費用特約は、事故の際、費用負担なく弁護士に依頼できる便利な特約です。必ず付帯しているものではありませんが、知らずに加入しているケースもあります。
(2) 弁護士特約の確認方法
弁護士特約があるなら、「弁護士に依頼しようか迷う…」と悩んでしまう時間はもったいないです。
交通事故で弁護士依頼を考えていらっしゃる方は多くの方が、怪我をしている人身事故のケースでしょう。加害者側の任意保険会社とのやりとりで精神的にも負担がかかっていることがあります。
面倒な手続きは弁護士に任せて、治療に専念したほうが早期の回復にもつながります。
もっとも、「自分が加入しているのかわからない」ということもあるでしょう。
そんな方のために簡単な確認方法をご説明します。
弁護士特約の有無は、自動車保険の保険証書を確認すれば簡単にわかります。契約事項の欄に弁護士特約に関する記載がないか確認してみてください。
もし保険証書がすぐに見つからないという場合は、加入している保険会社に直接問い合わせてみましょう。保険証書を送ってもらうか電話で尋ねてみることで、特約に加入しているかどうかがすぐにわかります。
このように、確認方法は極めて簡単です。皆さんも一度保険証書をチェックしてみてください。
2.弁護士特約の具体的な補償内容
具体的には「何が・誰に」補償されるのか
次に、弁護士特約の内容をみていきましょう。具体的な保障内容と補償対象をご説明します。
(1) 相談費用と示談交渉費用が300万円まで補償
では、実際にはどのような補償内容となっているのでしょうか。
弁護士費用は、基本的に2つの種類にわけることができます。それは、法律相談の費用と依頼後の費用です。
弁護士費用特約では、この2つが補償の対象となっています。そのため、基本的には被害者・加害者に関わらず原則として費用負担はゼロということになります。
補償内容としては、相談費用として10万円まで、示談交渉費用として300万円まで補償を受けられます。
一般的な相場として、相談費用は30分5000円程度が多くなっています。そのため、いくつかの事務所に相談に行った場合や、複数回同じ弁護士に相談した場合でも10万円を超えることは少ないでしょう。
また、交通事故では、基本的には示談交渉が弁護士の仕事の中核となってきます。
実際に依頼するとなると、着手金・成功報酬等がかかってきますが、これも300万円を超えるようなことはほとんどありません。
大きな事故でかなりの損害賠償額が予想される場合はこれ以上の費用がかかってくることもありますが、依頼前に弁護士に見積もりを出してもらえば安心できるはずです。
ちなみに、交通事故被害者で過失割合がゼロの場合は、被害者が加入する保険会社が介入してくることはありません。
しかし、弁護士費用特約は利用できますので、ご自身で連絡することが大切です。
(2) 契約当事者だけでなく家族も補償範囲
「子どもが事故を起こしてしまった。弁護士特約は利用できない?」
契約当事者じゃないと、弁護士特約を利用できないと考えている方は非常に多いです。聞くまでもないと考え、利用を控えている方はかなりもったいないといえます。
というのも、弁護士費用特約の対象範囲は意外と広いからです。
具体的には、①契約当事者はもちろんのこと、②契約者と同居の家族、③別居中の未婚の子ども、④同乗者(契約自動車に限る)も補償対象となります。
一緒にお住まいの家族が補償されるだけでなく、大学などで家を離れているお子さんも補償されるのは嬉しいでしょう。
また、「親が購入した車でお子さんが友達とドライブに出かけて事故」というケースでは、その友達も補償対象になります。
よく考えてみると、自動車保険自体がもともと広い範囲で利用できる仕組みになっているため、当然といえば当然のことです。
自動車保険が利用できそうなケースでは、弁護士費用特約も利用できる可能性が高いということを覚えておいてください。
3.弁護士費用特約のメリット&デメリット
次に、弁護士費用特約のメリットとデメリットをご紹介いたします。
(1) メリット
弁護士費用特約を利用すると、費用負担ゼロ以外にも嬉しいメリットも付いてきます。
具体的には、以下のような利点があるのです。
①交通事故に関する手続きを任せられる
弁護士特約を利用して弁護士依頼を決断すると、その時点から被害者が行う手続きは弁護士が行ってくれます。
任意保険会社とのやりとりから、示談交渉、納得がいかない点についても弁護士が代わりに保険会社に交渉を行ってくれます。
治療を続けながら、交通事故に関する様々な手続きを行うのは大変です。この点弁護士に任せることができるのは大きなメリットといえます。
②慰謝料額がアップする
弁護士が交通事故事件の代理人となる場合、「慰謝料額がアップする」というお話を聞いたことはありませんか?これは、多くのケースで事実といえます。
もちろん、物損事故の場合などそもそも慰謝料が請求できない場合は別ですが、慰謝料が請求できるケースの場合は、弁護士基準と呼ばれる算定基準を用いて慰謝料額を算出するため、任意保険会社が提示する額よりも大幅にアップすることがあります。
特約利用で費用面の負担もないため、増額分がそのままメリットとして享受できるのは嬉しいです。
③身体的・精神的ストレスが軽減
被害者が任意保険会社や加害者と行う示談交渉は、精神的負担が大きいのが通常です。
人身事故の場合は、怪我の治療を行いながら交渉を続けていかなければならず、相手方が素直に応じてくれないとストレスが溜まっていきます。
この点、弁護士がいれば交渉ごとはお任せできるので、余計なストレスを溜めずに済みます。
身体的にも精神的にも負担が軽くなり治療に専念できるようになるでしょう。
④早期解決が期待できる
知識のない被害者が任意保険会社のプロと同等に交渉することはかなり難しいでしょう。この点、弁護士ならば法律のプロとして交渉に臨むことができるため、スムーズに話が進みます。
交渉の落とし所も理解しているため、早期解決が期待できるというメリットがあるのです。
このように、弁護士特約を利用すれば、費用面のメリットだけでなく多くのメリットがあります。
(2) 弁護士費用特約が使えない場合
「弁護士費用特約って使えないケースはないの?」
交通事故に関していうと弁護士費用特約は、「被害者のみしか利用できない」などの制約はなく、過失割合が10:0というケースでない限り、加害者も利用することは可能です。
また、特に「こんな事故はNG」などの事故態様によって利用が制限されるなどのデメリットもありません。
もっとも、必ず利用できるというわけではなく、例外ももちろんあります。
- 過失割合が10:0の加害者
- 地震・津波などの災害
- 極めて重大な過失がある場合
弁護士費用特約は基本的には被害者の利用を想定しています。そのため、交通事故であっても過失割合が10:0の完全な加害者である場合は利用することができません。
逆にいうと、被害者に1割でも過失がある場合は、その分につき損害賠償請求をするために弁護士特約を利用することは可能です。
また、他の保険と同様に地震や津波などの災害が理由の事故は利用できません。
そして、被害者であったとしても、飲酒運転や無免許運転などの重大な過失がある場合は適用除外となりますのでご注意ください。
このように、弁護士費用特約が利用できないのは、例外的な事例です。特に重大な過失もない交通事故の被害者は安心して利用することができます。
4.弁護士費用特約は積極的に活用するべき
弁護士費用特約をつけると、月々100円程度の保険料の出費が増えますが、万が一の事故で数十万円の費用が軽減できるという点でかなりお得です。
実際に事故被害に遭い、特約を利用しても、保険の等級が下がることはなく保険料が上がることはありません。
現在加入していないという方は、保険更新の際にぜひ検討してみてください。
また、交通事故被害に実際に遭ってしまったという方は、保険証書をご確認ください。
弁護士費用特約を利用すれば、費用負担ゼロで示談交渉を任せられるだけでなく、慰謝料増額も期待できます。上手に保険を活用して、交通事故の負担を軽減しましょう。
交通事故事件を数多く取り扱う泉総合法律事務所は、弁護士費用特約に加入している方からのご相談を喜んで承っております。専門家である弁護士が交渉を全面的にサポートさせていただきますので、交通事故でお悩みの方は是非一度ご相談ください。
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