交通事故で骨折!慰謝料の相場はどのくらい?
交通事故による骨折のために入院や通院の必要があった場合や、不運なことに骨折による後遺症が残ってしまった場合には、それぞれ、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を損害賠償金として受け取ることができる可能性があります。
交通事故によりこういった精神的苦痛を被られた以上は、被害者の方々としては、せめても適正な慰謝料を受け取ることにより金銭的に償われるべきです。
しかし、実は、治療の受けかた次第では、入通院慰謝料の額や後遺障害等級の認定の可否に至るまで、悪い方向で影響を及ぼしかねない危険性が潜んでいます。
今回は、交通事故被害者の皆さまが、骨折の治療を受ける際に気をつけるべきことをまとめました。
このコラムの目次
1.交通事故による骨折について
(1) 交通事故でよくある骨折の分類
交通事故の際には、骨折は主に、頭蓋骨、鎖骨、肋骨、指骨、鼻骨、尾骨、橈骨、尺骨、脛骨、腓骨、脊椎骨などの箇所に生じます。
そして、骨折の分類としては、①単純骨折、②複雑骨折、③剝離骨折、④粉砕骨折、⑤圧迫骨折、⑥破裂骨折等があります。
- 単純骨折
体内で骨折が起きているもの - 複雑骨折
骨折した骨が皮膚を突き破り体外に露出しているもの - 剥離骨折
骨に対して直接の力は作用していないものの、腱・靭帯などの引っぱる力によって、その付着部の骨が引き裂かれて生じた骨折のこと - 粉砕骨折
骨折部位が3つ以上の骨片に分離したもの - 圧迫骨折
背骨の椎体と呼ばれる部分が、上下方向に過度に圧迫されたことにより生じる骨折 - 破裂骨折
前後の椎体骨が圧迫骨折し、椎体の後方部が突出して脊柱管を圧迫している骨折
(2) 骨折の際に残りうる後遺障害
注意しなければならないのは、骨折してもそれだけで当然に後遺障害として認められるわけではないということです。
たとえば、足の骨折の場合であれば、欠損障害(一部切断)・機能障害(関節の変形に伴って可動域が一定割合以下に狭くなる)・変形障害(骨が正しく接合せずに変形)・神経障害(しびれや痛み)などがある場合に限られます。
治療の結果、骨が正常に接合し、痛みもそれほど残らない場合には、後遺障害は認められないということになります。
骨折の際に残り得る後遺障害は、それぞれの程度や種類によって様々な等級が定められています。
後遺障害について、詳しくは以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
後遺障害等級認定を受けると慰謝料はどれくらい変わるのか?
2.交通事故の骨折治療で気を付けるべきこと
(1) 初診
まず初診では、どのような事故態様で、身体のどの部分にどのような力が及んだのか、医師にできる限り詳しくお話しください。
これは、医師の治療のために役立つと同時に、後々、運悪く後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級認定の際のプラスの判断材料としても重要な事実となります。
事故の態様と接触箇所などの説明と、怪我の状態に矛盾がなければ、まさにその事故によって引き起こされた骨折である、として因果関係があることが導かれやすくなるのです。
しかし、たとえば骨折以外の痛みがひどかったせいで、それに隠れてしまっていた骨折部分の痛みを事故からしばらく経った後に訴えたような場合には、事故との因果関係の点が疑われて、加害者側保険会社が治療費や入通院慰謝料などの支払いを拒絶する場合があります。
このような事態を避けるために、事故直後にはまず、医師に余すところなく負傷状況・痛みなどをご説明ください。
交通事故後には、整骨院・接骨院ではなく、必ず病院・整形外科で受診をしてください。後遺障害等級認定のために必要な、後遺障害診断書は、整骨院・接骨院では発行できないためです。
その後、医師の指導のもと、治療の一環として整骨院・接骨院に通うのであれば、入通院慰謝料等との関係でも、病院への通院に準じる扱いを受けることができます。
(2) 保険会社による治療費の打ち切りへの対応
骨折の場合、症状によりますが、半年程度で任意保険会社が治療費の支払いの打ち切りを通告してくることが多くなります。
しかし、これはあくまでも「治療が長引くことによって、自賠責保険の限度額を越え、自社負担が発生することを避けたい」という保険会社の都合によるものです。
被害者の皆さまは、担当医師に相談した上で、医師が治療継続を必要と説明するのでしたら、保険会社に治療費の支払い再開を要請すべきです。
このような場合に、保険会社との交渉に慣れた弁護士に依頼すれば、医師から診断書を取り寄せたり医師面談をするなど事案に応じた適切な対応で、無事に支払い再開に持ち込める可能性もあります。
ご自身のお身体のことを思えば、症状固定(現在の治療を続けても、それ以上症状の改善が得られることはなく、治療を中断しても、悪化する可能性がない状態に至った時点のこと)までは、一時的に自己負担になってしまっても、通院して治療を受けるべきです
この場合、なるべく自己負担を減らすための工夫として、健康保険、国民健康保険を利用しましょう(なお、後日相手方に請求できるように、領収証を保管しておくことが大切です)。
交通事故による負傷の治療が長引いてしまったような場合には、健康保険を利用していても治療費立替の支払いに困ってしまうという事態に陥ることもあり得ます。
しかし、このような場合に、慌てて(額にこだわらず)示談をするようなことは避けねばなりません。怪我が完治・症状固定する前に示談をしてしまうと、正当な金額の慰謝料を受け取れないでしょう。
もし、ご自身が加入している任意保険に人身傷害補償保険が付帯していれば、治療費等が一旦は支払われることになります。そうでない場合でも、被害者のために設けられている仮渡金の制度というものがありますので、一度問い合わせてみましょう。
(3) 望ましい通院頻度
任意保険会社に対して、弁護士基準(詳しくは後述)で入通院慰謝料を請求する場合、その計算の基準となる通院回数は週に2回です。
ですから、望ましい通院頻度は、週2回以上ということになります。
事故現場から救急搬送された場合には自宅から病院が遠くてなかなか通院できないということもあります。任意保険会社の了解を得た上で、自宅や職場の近くといった通院しやすい病院に転院し、十分な通院頻度を確保することをおすすめいたします。
また、後遺障害の等級認定を受けるためという観点からも、整形外科に半年間以上、この週2回以上のペースで通院することが望まれます。
仕事が忙しいなど、それぞれに事情があるかと思いますが、痛みが残っている場合には、通院を中断しないようにご注意ください。
1ヶ月以上通院を中断してしまったような場合には、任意保険会社からその後の通院の必要性を否定される可能性が高くなりかねません(自賠責保険の運用で、治療の中断期間が30日を超えると、事故との因果関係が途切れ、治療の再開は認められないことがあります)。
3.骨折の慰謝料相場
(1) 交通事故による慰謝料の種類
交通事故による慰謝料には、入通院慰謝料(傷害慰謝料)、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。
- 入通院慰謝料
交通事故で怪我をし、治療のために入院・通院しなければならなかった精神的苦痛に対する慰謝料 - 後遺障害慰謝料
後遺症が後遺障害等級認定された場合にはじめて認められるもので、これからの生活上の不便についての精神的苦痛を補償するための慰謝料 - 死亡慰謝料
交通事故被害者の方が死亡してしまった場合、遺族が請求できる慰謝料
(2) 慰謝料算定の基準
以下は、(1)の3つの慰謝料の類型のいずれにも共通する知識です。交通事故の示談交渉で保険会社とやり取りする際に、被害者の方々が必ず知っておくべき、最も重要な知識の一つとなります。
実は、慰謝料算定の基準は3種類も存在しています。
それぞれ①自賠責基準、②任意保険会社基準、③弁護士(裁判基準)基準となりますが、これらのうちどの基準を用いるかが、慰謝料の額に大きく影響を与えることになります。
①自賠責基準から③弁護士基準の順に、その額は大きくなっていきます。
保険会社同士の示談交渉で用いられる②任意保険会社基準は、①自賠責基準に多少色をつけた程度の額です。
しかし、③弁護士基準が用いられた場合には、①自賠責基準や②任意保険会社基準の2〜3倍もの額となり得ます。
ただ、③弁護士基準はあくまで、被害者に弁護士がついて交渉している場合にはじめて保険会社が提示してくる額となっています。
交通事故において、弁護士に依頼する最大の利点の1つがこの点となります。
(3) 入通院慰謝料の相場
月の通院日数を10日間とした場合に、6ヶ月通院した場合の慰謝料の相場を具体的に見てみましょう。
通院期間 |
自賠責基準 |
裁判所(弁護士)基準 |
6ヶ月間 |
50万4,000円 |
89万円 |
①自賠責基準の通院慰謝料の算出方法は、以下の式を計算した上で、額が少ない方を採用する方式です。
- 4,300円×治療期間(病院に通っていた期間)
- 4,300円×実通院日数(実際に病院に通った日数)×2
②裁判所基準の通院慰謝料は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部)に記載されている表で算定します。
(4) 後遺障害慰謝料の相場
額については、基本的には後遺障害の自賠責等級に応じて決められています。
多くの裁判所では、下記表が基準として用いられています。
後遺障害等級 |
自賠責基準 |
裁判所(弁護士)基準 |
1級 |
1,100万円 |
2,800万円 |
---|---|---|
2級 |
958万円 |
2,370万円 |
3級 |
829万円 |
1,990万円 |
4級 |
712万円 |
1,670万円 |
5級 |
599万円 |
1,400万円 |
6級 |
498万円 |
1,180万円 |
7級 |
409万円 |
1,000万円 |
8級 |
324万円 |
830万円 |
9級 |
245万円 |
690万円 |
10級 |
187万円 |
550万円 |
11級 |
135万円 |
420万円 |
12級 |
93万円 |
290万円 |
13級 |
57万円 |
180万円 |
14級 |
32万円 |
110万円 |
程度の差こそあれ、③弁護士基準の額が圧倒的に大きいことにお気づきになられたでしょうか。
4.骨折の示談交渉
すでに述べた通り、被害者が直接保険会社と交渉する場合に保険会社が最初に提示する任意保険基準の示談金額は、弁護士(裁判所)基準と比べ大幅に低いものです。
しかし、一般の被害者の皆さまは、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準と、慰謝料に3つもの基準が存在することを知らないために、保険会社が提示する額をそのまま受け入れてしまうことが多いのが実情です。
しかし、弁護士に骨折の慰謝料請求の交渉を依頼した場合には、弁護士基準を前提とすることが可能になります。
また、慰謝料額を争う前提として、後遺障害慰謝料に関しては、適正な後遺障害等級認定を受けることがまず大切です。
後遺障害等級認定のための的確な資料収集は、なるべく早いタイミングに、交通事故に精通した弁護士に、どのように検査を受けどのような資料を集めるかについて相談するのが最も効果的といえます。
医師の仕事は、あくまで怪我の治療であって、後遺障害等級認定を獲得することではないため、的確な後遺障害診断書を書いてもらうためにも、交通事故に通じた弁護士のアドバイスが重要となってくるのです。
5.交通事故は弁護士にご相談ください
事故により入院や通院をすることを余儀なくされた場合には、適正な入通院慰謝料を受け取ることができるよう、治療を受けられる際には上記の点について注意を払うことをお勧めします。
また、不運にも後遺症が残ってしまったような場合には、適切な等級の獲得のために、交通事故実務に精通した弁護士にアドバイスを求めるのが良いでしょう。
また、いずれの慰謝料に関しましても、弁護士に示談交渉を依頼することにより、弁護士基準が用いられるようになれば、大幅な増額が期待できることになります。
示談にいったん合意してしまうと、適正でない額の慰謝料等であっても、改めて請求し直すことは極めて困難になります。無料の法律相談を実施している弁護士事務所も多いので、まずは相談だけでもしてみては如何でしょうか。
泉総合法律事務所の各支店でも、交通事故の相談は初回1時間無料で承っております。交通事故の解決経験が豊富な弁護士も多数在籍しておりますので、どうぞ安心してご相談ください。
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