交通事故

交通事故で打撲をした場合の後遺障害慰謝料と示談交渉

交通事故で打撲!慰謝料と示談交渉で気を付けるべきこと

交通事故による強い衝撃のせいで、頭、腰、手足などの様々な箇所に打撲の怪我を負ってしまうことは珍しくありません。

打撲は、皮下組織や筋肉、靭帯、腱など軟組織の損傷です。交通事故では大きな外力が加わることが多く、全治が半年に至ってしまうような重症のケースもあり得ます。
さらに、後遺症が残ってしまうこともあるでしょう。

このように、交通事故による打撲のために入院や通院の必要があった場合や、後遺症が残ってしまった場合には、それぞれ、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を損害賠償金として受け取ることができる可能性があります。

ここでは、打撲の慰謝料相場や、保険会社との示談交渉での注意点について説明します。

1.打撲により受け取れる可能性がある慰謝料

まず、交通事故における「慰謝料(精神的苦痛に対する損害賠償金)」についての基礎知識を解説します。

(1) 交通事故による慰謝料の種類

そもそも交通事故による慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。

  • 入通院慰謝料
    交通事故で怪我をし、治療のために入院や通院をしなければならなかった精神的苦痛に対する慰謝料です。通院期間を基礎として算出されます。
  • 後遺障害慰謝料
    後遺症が後遺障害等級認定された場合に認められるもので、今後の生活上の不便についての精神的苦痛を補償するために、その等級に応じて支払われる慰謝料です。
  • 死亡慰謝料
    交通事故で死亡した被害者の精神的苦痛を、遺族に対し金銭で償うものです。

打撲では、入通院慰謝料と、場合によっては後遺障害慰謝料を受け取ることができます。

(2) 慰謝料算定の基準

実は、慰謝料算定の基準は3種類存在しています。

それぞれ、①自賠責基準、②任意保険会社基準、③裁判所(弁護士)基準、となります。

①自賠責保険基準

自賠責保険に請求する際に用いられるもので、人身事故について、自賠責保険の損害額を算定する際に、損害保険料率算出機構が使用する基準です。

自賠責保険は、そもそも交通事故の被害者が最低限の補償を受けるための制度であるため、その額も最低限のものになっています。

②任意保険基準

任意保険会社が被害者に提示する際に用いるもので、人身事故についての任意保険での損害額算定基準です。

保険の自由化に伴って各社統一支払基準は廃止され、各保険会社が個別の支払基準を作成しています。

③弁護士基準

弁護士が相手側に請求するときに用いるもので、弁護士会が過去の判例を参考に基準額を算定したものです。公益財団法人日弁連交通事故相談センター編による交通事故損害額算定基準が全国的に使用されています。

 

これは、先述の3つの慰謝料の類型のいずれにも共通する基準です。
また、交通事故の示談交渉で保険会社とやり取りする際に重要な知識になるものです。

これらのうちどの基準を用いるかが、慰謝料の額に大きく影響を与えることになるのです。

①から③の順に、その額は大きくなっていきます。ただし、保険会社が示談交渉で用いる②は①に多少色をつけた程度の額です。
しかし、③が用いられた場合には、①や②に比べ大幅に金額が増えるケースがあります。

ただ、③はあくまで被害者に弁護士がついて交渉している場合にはじめて保険会社が提示してくる額となっています。

交通事故において、弁護士に依頼する最大の利点の1つがこの点となります。

2.打撲の後遺障害等級について

後遺障害等級とは、怪我が完治せずに後遺症が残ってしまった場合で、自賠責保険で定められている1級(重度)〜14級(軽度)までの症状に当てはまっているものを言います。
認められた等級に応じて、後遺障害慰謝料が算出されることになります。

被害者が後遺障害等級を受けると何が変わるのか?

[参考記事]

後遺障害等級認定を受けると慰謝料はどれくらい変わるのか?

軽症の打撲の場合、後遺障害等級が認定されるには至らないケースがほとんどです。

しかし、打撲の怪我を負った場合、痺れや痛みなどがなかなかとれないことがあります(外からは後遺障害が残っていることが分かりづらいことも多いです)。

打撲の箇所や程度次第では、仕事や日々の暮らしに大きな不具合がでてしまうかもしれません。

例えば、打撲であっても、MRI画像等の他覚的所見によって、靭帯断裂などが把握できた場合には、12級以上の等級が認定されることがあります。

また、顔面などを打撲した際に、神経系統の障害が生じることもあり得ます。
このような場合には、14級第9号(局部に神経症状を残すもの)や12級13号(局部に「頑固な」神経症状を残すもの)の認定の可否が問題となります。

【後遺障害慰謝料の額(自賠責基準・弁護士基準)】

後遺障害等級

自賠責基準

弁護士(裁判所)基準

12級13号

93万円

290万円

14級9号

32万円

110万円

【14級と12級の判断基準の違い】
14級と12級の違いについて簡単に説明しますと、「頑固な」という言葉が意味するのは、あくまで自覚症状の程度ではなく、他覚的所見の存否となります。
つまり、14級と12級の分かれ道は、画像診断などの検査で異常が見られる(客観的に判断できる)か否か、ということになります。
ですから、たとえ痛みがいかに強かろうとも、自身の痛みを単に訴えるだけでは、残念ながら12級が認定されることはありません。画像や検査などから客観的に判断できない場合には、仮に後遺障害等級が認定されるとしても14級にとどまることになります。

3.打撲の治療で気を付けること

(1) 事故直後に通院をしておく

事故から時間が経つことにより、交通事故が原因の怪我なのか否かの判断が難しくなります。
そうすると、医師にその交通事故を原因とする怪我であるという診断書を書いてもらうことが難しくなる可能性があります。

実際、事故から受診まで2週間を超えると、事故と怪我との間の因果関係を証明するのは難しいとされています。

ですから、事故直後に必ずしも痛みがなかったとしても、なるべく早めに、念のため病院で診断を受けることを強くお勧めします。

また、例え診断書があったとしても、事故から間隔が空いてしまった場合には、加害者側保険会社が事故とは無関係なものだと主張して、治療費ひいては入通院慰謝料などの支払いを拒絶する場合があります。

(2) 治療を勝手に中断しない

自営業で仕事が忙しいなど、人それぞれに様々な事情はありますが、痛みなどが少しでも残っている場合にはできるだけ通院を中断しないようにご注意ください。

特に、1ヶ月以上通院を中断してしまったような場合には、任意保険会社からその後の通院の必要性を否定される可能性が高くなります。
この場合、後遺障害の等級認定にも重大な悪影響を及ぼすことになってしまいます。

【望ましい通院頻度】
任意保険会社に対して裁判所基準で入通院慰謝料を請求する場合、その計算の基準となる通院回数は1週間に2回です。
痛みなどを感じながらも、忙しかったり面倒だったりと通院を怠ってしまうことは、自身の身体のためにならないだけではなく、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を受け取る観点からも大きなデメリットとなる可能性があります。

(3) 受診は必ず整形外科にする

交通事故後には、整骨院ではなく、必ず病院・整形外科で受診をしてください。後遺障害等級認定のために必要な後遺障害診断書は、整骨院・接骨院では発行できないからです。

その後、医師の指導のもと、その必要性が認められたうえで整骨院・接骨院に通うのであれば、病院への通院に準じる扱いを受けられるので安心です。

(4) 領収書は必ず保管する

治療費に直接関係するもののみならず、例えば、救急車ではなくタクシーで病院に行った場合の領収書など、交通事故を原因として生じたと考えられるあらゆる費用に関する領収書についてはすべて保管しておき、最終的な費用請求に備えておきましょう。

4.打撲の示談の際に気を付けること

(1) 弁護士基準で算定するため弁護士に依頼する

保険会社と争いになるのは、やはり慰謝料の額です。

すでに述べた通り、被害者が直接保険会社と交渉する場合に、保険会社が最初に提示する自賠責基準や任意保険基準による金額は、弁護士(裁判所)基準と比べ大幅に低いものですあることが少なくありません。

しかし、一般の被害者の方は、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準と、慰謝料に3つもの基準が存在することを知らないために、保険会社が提示する額をそのまま受け入れてしまうことが多いのが実情です。

しかし、弁護士に慰謝料請求の交渉を依頼した場合には、裁判所を利用しない場合であっても、弁護士基準を前提として交渉することが可能になります。

(2) 後遺障害等級認定のための資料収集は怠らない

また、慰謝料額を争う前提として、後遺障害慰謝料に関しては、適正な後遺障害等級認定を受けることがまず大切です。

そのためには、症状固定まで通院すること、医師に的確な後遺障害診断書を作成してもらうこと、被害者請求の手続きによること、などが重要になります。

加害者側の保険会社はあくまでも、後遺障害等級が認められ、慰謝料額が増えれば、その支払いを強いられる立場にあります。つまり、被害者の味方としての立場にはいないのです。

被害者の方に有利な内容の医師による証明書(カルテや専門医の意見書等)や、不利な事情を補うための説明文書などを提出して、後遺障害等級認定を受けられる可能性を少しでも上げるようにすることが大切です。

そして、的確な資料収集のためには、なるべく早いタイミングに、交通事故に精通した弁護士に、どのように検査を受けどのような資料を集めるかについて相談するのが最も効果的といえます。

医師に的確な後遺障害診断書を書いてもらうためにも、実は、交通事故に通じた弁護士のアドバイスが重要となってくるのです。

5.打撲等の交通事故の示談交渉は泉総合法律事務所へ

事故により入院や通院をすることを余儀なくされた場合には、適正な入通院慰謝料を受け取ることができるよう、治療を受けられる際には上記の点について注意しましょう。

また、不運にも後遺症が残ってしまったような場合には、後遺障害の等級が適正に認定されるか否かが損害賠償金の総額に大きく影響することになります。

適正な等級の獲得のためには、医師に適切な後遺障害診断書を作成してもらい、その他の医学的証明書の適切な収集も行うことが有益です。
また、いずれの慰謝料に関しましても、弁護士に示談交渉を依頼することにより、弁護士基準が用いられるようになれば、大幅な増額が期待出来ます。

泉総合法律事務所は、初回無料の法律相談を実施しています。交通事故に詳しい弁護士へ、まずは相談だけでもしてみてください。保険会社との交渉や諸々の専門的な手続きなどのストレスから離れた上で、治療に専念されることをお勧めします。

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